アイデアストア(ロンドン市タワーハムレッツ区)

イデアストアは、ロンドン市内の東側にあるタワーハムレッツ区のホワイトチャペル駅前に立地する市立図書館です。

かつて、タワーハムレッツ区の市立図書館は、蔵書が少ない、IT対応が遅れている、地理的に不便といった問題があり、利用者は一部の市民に限られていました。そこで、利用者だけでなく、非利用者に対してもインタビュー調査を行い、新しい図書館のあり方を検討しました。その考えが体現した施設がアイデアストアです。1998年に同施設が建設されると、これまで利用しなかった住民も積極的に利用するようになり、利用者数はなんと4倍にも膨れ上がりました!なお、同地区には7つの図書館がありますが、このうち4施設は、既にアイデアストアのコンセプトに基づく施設となっており、残りの3施設についても2〜3年以内に、同じコンセプトの施設に建替える予定とのことです。

それでは、アイデアストアは、従来の図書館とどこが違うのでしょうか。

1つ目の特徴は、図書と生涯学習の統合です。アイデアストアでは、語学講座やヨガ教室など、800の生涯学習講座が設けられていますが、ラーニングルームの近くには、講義に関係する教材や参考図書が配架されています。それゆえ、例えば、語学講座の場合であれば、講義の終了時に講師が参考図書を紹介し、利用者は推薦された本を借りて自宅で読むといった形で図書が活用されています。

2つ目の特徴は、快適な空間の提供です。David Adjayeという著名な建築家(当日、偶然、施設でお会いしました!)によって設計されたこの施設は、利用者にモダンで快適な空間を提供しています。最上階のカフェでは、多くの人達が談笑していました。また、施設利用に関する特別な利用制限もなく、個々人のモラルに一任されている点も、自由度を高め、人々が主体的に図書館を利用するモチベーションとなっているようです。

図書館が新たな利用者を獲得するためには、図書館が有する蔵書を最大限活用できる「仕組み」を考えるのが重要なのではないか。アイデアストアの視察を通じて、このようなことを強く感じました。