大宅壮一文庫に行ってきました

日本の専門図書館の代表格として多くの人たちの頭に思い浮かぶのが、明治時代から現代に至る雑誌を収蔵している大宅壮一文庫ではないでしょうか?今回は、世田谷の閑静な住宅街にたたずむ大宅壮一文庫を訪ねました。
大宅壮一文庫は、大宅壮一氏が自宅の資料室に集めた雑誌をもとにつくられた図書館で、1971年に財団法人大宅文庫として設立されました(1978年に大宅壮一文庫に改称)。
現在の蔵書数は約70万冊ですが、大宅壮一氏は存命中に既に20万冊を収集していたそうです。何が彼を雑誌集めに没頭させたのでしょうか?それは、雑誌は新聞とともにその時代に起こった出来事を掲載するとともに、新聞以上に事件の背景などを詳細に記述した時代検証の鏡であると考えたからだそうです。読み終わったら捨ててしまう雑誌もここまで集めれば立派な図書館。大宅壮一氏の視点の柔軟さに感心するばかりです。
大宅壮一文庫の特徴は蔵書が豊富なことだけではありません、独自の索引システムの確立により、利用者がほしい情報を的確に提供できる体制を整えているのです。キーワードを入力するだけで、記事の内容やポイントまでわかってしまう索引システムは、ネット時代の現代においても十分に価値を発揮しています。ちなみに、索引システムの更新は全てベテランの職員があたっているそうです。
大宅壮一文庫の利用者層の中心はマスコミ関係者。日々締め切りに追われる記者のワークスタイルに対応するために、ファクシミリサービスなど多様なサービスを提供しています。また、近年は卒業論文執筆を目的とする学生さんの姿も目立つようです。
大宅壮一文庫の収益は、賛助会費やサービス利用料、索引データベースの販売などで成り立っています。近年はマスコミ産業の不況やネット社会の到来などにより利用者数も伸び悩み傾向にあるそうですが、今年になって利用料の大幅な値下げを敢行。より多くの人たちに利用してもらうための環境形成に努力しているとのことでした。マスコミ関係者はこれからも重要なターゲット層であり続けるのでしょうが、若い人たちにとっては歴史が無味乾燥としたものではないことを知るきっかけとして、また、高齢の方にとっては、これまでの時代を振り返る思い出の地として、もっと多くの人たちに利用される可能性のある図書館なのではないかと思った次第でした。