第1回委員会を開きました!

「開かれた私立図書館の事業可能性調査」において、有識者のみなさまの意見をお聞きする目的で10月16日に第1回委員会を開催しました。
委員として参加にご協力いただいたのは、横浜市立大学エクステンションセンターの南学エクステンションセンター長(委員長)、株式会社ダイヤモンド社営業局長の坪井賢一取締役、アカデミック・リソース・ガイドの岡本真編集長の3名です。なお、本調査にご協力いただいている株式会社図書館総研のみなさまにも委員会に参加いただきました。
南委員長は行政側の立場から図書館を研究した実績があり、坪井委員は図書館関連の著書があるほど図書館の事情に精通、岡本委員はデジタル化の視点から図書館のあり方について数々の問題提起をされるなど各委員の持ち味は多彩に富んでおり、新しい私立図書館像構築に向けて期待は高まるばかりです。
第1回委員会では早速、現状の図書館に対する課題認識からこれまでにない図書館のあり方に関する提案が飛び出すなど、アットホームな雰囲気ながら刺激的かつ興味深い内容となりました。この日の貴重な意見をあますところなく吸収し、みなさんが「目からウロコ」の私立図書館のコンセプトを構築したいと身が引き締まる思いです。

私立図書館の現状について

最初のごあいさつ以来、ブログの更新がすっかり滞っていましたが、調査も本格化してきましたので、今後は成果を定期的に報告していきたいと考えています。
第一弾として、今回の調査テーマ「開かれた私立図書館の事業可能性」の可能性を探る意味で、民間企業が設置している図書館の現状についてご紹介したいと思います。

一言で「民間企業が設置している図書館」と言っても全容を把握するのはなかなか難しいのですが、今回は『専門情報機関総覧2009』を活用し、機関別分類において、「民間企業体」と分類される専門図書館の現状を調べてみました。


■公開状況について
全体の約4分の3が非公開の形態をとっていました。当たり前なのかもしれませんが、民間企業では、「図書館は社員のもの」という認識が一般的のようです。

■料金の徴収について
何らかの形で一般に開放している図書館のうち約9割は、入館料金が無料であることがわかりました。これからしっかりとした分析をしていなければいけませんが、企業のプロモーション施設という位置づけで、図書館を設置しているケースが多いように見受けられます。

■提供サービスについて
「蔵書検索」や「レファレンス」など、基本的な図書館サービスについては、全体の約8割が実施していました。また、「SDIサービス(文献データベースを定期的に送信するサービス)」や「主題別分析レポート」など、公立図書館ではあまり提供していないサービスについても、一定数の取り組みが見られました(「SDIサービス」は約4割、「主体別分析レポート」は約1割)。「会社の知の中枢」として図書館が存在感を発揮している様子がうかがえます。


このように分類をしてみると、一般の方々が自由に利用できる、「開かれた私立図書館」というのは非常に少ないのだなと実感しました。また、一般公開している場合、大半の私立図書館が無料あるいはわずかな料金しか徴収していません。図書館はあくまで顧客へのPR手段の一つであり、事業性は求めていないのかもしれません。
一方、提供サービスについては、公共図書館ではあまり見られない、個々の利用者のニーズに対応したサービスを提供していることがわかりました(残念ながら対象者は限られていますが)。
全体として、民間企業が設置している図書館の現状は、「(ターゲットは)狭く、(サービス内容は)深く」であり、本調査で目指している私立図書館像「広く、かつ深く」との乖離があるのだなあと実感しました。また、事業性についても、企業として図書館に求めていない可能性があるなと感じました。
しかし、(あくまで社員が対象ですが)民間企業の図書館がレベルの高いサービスを提供していることには良い意味での驚きがありました。これまでの事業活動を通じ蓄積してきた高度な知識やノウハウの一部を、企業が提供してきた従来の商品やサービスとは違った形で提供できれば、「開かれた私立図書館」の存在意義があるのかもしれません。

はじめまして!

はじめまして、株式会社日本総合研究所です。今年度、図書館振興財団様のご厚意により、「開かれた私立図書館の事業可能性調査」を行うことになりました。
当社はこれまで、公立図書館の整備計画や事業手法検討、運営計画策定の支援のお手伝いをする中で、住民の方々の図書館に対する期待が非常に大きく、ニーズが多様化していると実感してきました。こうした状況を受け、一部の図書館ではビジネス支援など、サービスの多様化を推進しています。しかし、ほとんどの図書館が公営で運営されている現状では、特定の人たちを対象としたサービスを提供することには限界があります。
そこで、我々が注目したのが、運営者の方針がより明確に打ち出される私立図書館です。「開かれた図書館」という要素を満たしつつ「特定ニーズに応えるサービス」を提供する私立図書館像とは、具体的にどのようなものなのか。また、私立図書館が自立した運営を実現していくためにはどのような事業構造が必要なのか。これから1年間じっくりと調査・研究し、その成果を皆様にお届けしようと思います。どうぞよろしくお願いいたします!