私立図書館の現状について

最初のごあいさつ以来、ブログの更新がすっかり滞っていましたが、調査も本格化してきましたので、今後は成果を定期的に報告していきたいと考えています。
第一弾として、今回の調査テーマ「開かれた私立図書館の事業可能性」の可能性を探る意味で、民間企業が設置している図書館の現状についてご紹介したいと思います。

一言で「民間企業が設置している図書館」と言っても全容を把握するのはなかなか難しいのですが、今回は『専門情報機関総覧2009』を活用し、機関別分類において、「民間企業体」と分類される専門図書館の現状を調べてみました。


■公開状況について
全体の約4分の3が非公開の形態をとっていました。当たり前なのかもしれませんが、民間企業では、「図書館は社員のもの」という認識が一般的のようです。

■料金の徴収について
何らかの形で一般に開放している図書館のうち約9割は、入館料金が無料であることがわかりました。これからしっかりとした分析をしていなければいけませんが、企業のプロモーション施設という位置づけで、図書館を設置しているケースが多いように見受けられます。

■提供サービスについて
「蔵書検索」や「レファレンス」など、基本的な図書館サービスについては、全体の約8割が実施していました。また、「SDIサービス(文献データベースを定期的に送信するサービス)」や「主題別分析レポート」など、公立図書館ではあまり提供していないサービスについても、一定数の取り組みが見られました(「SDIサービス」は約4割、「主体別分析レポート」は約1割)。「会社の知の中枢」として図書館が存在感を発揮している様子がうかがえます。


このように分類をしてみると、一般の方々が自由に利用できる、「開かれた私立図書館」というのは非常に少ないのだなと実感しました。また、一般公開している場合、大半の私立図書館が無料あるいはわずかな料金しか徴収していません。図書館はあくまで顧客へのPR手段の一つであり、事業性は求めていないのかもしれません。
一方、提供サービスについては、公共図書館ではあまり見られない、個々の利用者のニーズに対応したサービスを提供していることがわかりました(残念ながら対象者は限られていますが)。
全体として、民間企業が設置している図書館の現状は、「(ターゲットは)狭く、(サービス内容は)深く」であり、本調査で目指している私立図書館像「広く、かつ深く」との乖離があるのだなあと実感しました。また、事業性についても、企業として図書館に求めていない可能性があるなと感じました。
しかし、(あくまで社員が対象ですが)民間企業の図書館がレベルの高いサービスを提供していることには良い意味での驚きがありました。これまでの事業活動を通じ蓄積してきた高度な知識やノウハウの一部を、企業が提供してきた従来の商品やサービスとは違った形で提供できれば、「開かれた私立図書館」の存在意義があるのかもしれません。